“やりがい”あるテーマ選定

日ごろからわたし自身が感じていたことだが、グループの会合をもって「次は何をやろうか」「何かいいテーマはな

いだろうか」的な話し合いではもう有効な意見も期待できない。今回もリーダーとして苦しむんだろうなぁ、とつい

後ろ向きに考えてしまう。

そこで、もう一度、テーマ選定のやり方を根本的に見直してみることにした。


 まず、何をテーマにするか、どんな改善をするかというモノの見方先行から、活動に取り組む意欲、何をもってわ

たしたちは“やりがい”とするか、“ヤル気”先行の議論をしたらどうだろうかと考えた。「やりたくない」とか「面倒く

さい」など後ろ向きな発言をたまには聞くが、会社の方針・制度として推進している以上、活動は“やらねばならな

い”こと。どういうことに取り組むことが“やりがい”を感じるか、からフリーディスカッションを仕掛けてみたい。

 わたし自身、ややもすると先輩メンバーの意見に引きずられる傾向があるので、「誰が言った」より「何を言っ

た」かを重視するように心掛けたい。

フリーディスカッションと言っても、ある程度は議論の材料を用意する必要がある。今回は特に“やりがい”を前提の

テーマ選定だから、改善議論の方向性は用意しておきたい。そこで今までの経験と社外セミナーなどで学んだことを

参考にして、テーマ選定の方向性のタタキ台を用意した。

 

会合までに用意した「6つのタタキ台」

 

タタキ台1

コスト削減や業務の効率化

テーマの定番である。常に方針にも示され、上司からも耳にタコのように要求されている。またわたしたちグループ

のみんなも十分その必要性は認識している。だが上からの要請に応えなければいけないというプレッシャーが“やりが

い”どころか“やらされ”になってしまう。

しかし“自”を前面に出し、自発・自主での議論をすれば、貢献度という点で“やりがい”を感じることはできるのではな

いだろうか。

 


タタキ台2

前後の工程との良好な関係性の確立

仕事というものは、決してわたしたちだけでできるものではない。モノやカネ、情報のやり取りなどすべて前後の仕

事(工程)との関連がある。往々にして独りよがりの仕事をしてはいないか。

もしかして前後の工程の人たちはこうしてほしいという要望や生産性向上のアイデアや提案があるかもしれない。部

分最適だけではなく全体最適的モノの見方、考え方での改善を考えてみよう。

 

 

タタキ台3
わたしたちのミッション・仕事の関係分析から問題発見

テーマを考える際にいつも真っ先に考えるのは、自職場・仕事からの発想であるが、周りに目を向けてみてはどうだ

ろうか。わたしたちのやっている仕事のお客さまは誰だろうか。

最終的には製品やサービスを買っていただくお客さまだが、その前にさまざまな内部顧客や外部顧客を経てエンドユ

ーザーのもとに届いている。

目線をわたしたちの仕事の周りの関係者をお客さまととらえると、そのお客さまに対して顧客満足度向上につながる

改善ができるのではないか。

 

タタキ台4
外注先や取引先とのコラボレーション改善

協力会社や協力業者の力なくしてわたしたちの仕事は成立しない。

日常の仕事関係でのやり取りが、もしかしたら上から目線の依頼になってはいないだろうか。フランクなコミュニケ

ーションで彼らの問題や提案、要望を聞いて改善に生かすことはコストダウンや業務効率アップにつながることがま

まある。

ただし改善はウインウインの関係でなくては本当の改善とは言えない。やった結果・成果が一方だけのメリットに偏

ることのないよう気をつけたいものだ。
 

 

タタキ台5
部門を超えたプロジェクト型活動

どうも長い間、同じメンバーで活動を続けていると、人間関係はがっちり固まるが発想となると新しい刺激がほし

い。かといってメンバーをシャッフルすることは難しい。

そこで部門を超えて声を掛けてみよう。技術と営業、営業と製造、製造と購買、研究開発と生産技術など、ややもす

ると利害が対立する部門間では、活動方式で両者共有の問題を解決することでコミュニケーションも活発になるよう

に思える。

 

 

タタキ台6
業務分析からの問題発見と業務効率化

他人から、特に上から言われると反発したくなるのが、仕事のやり方に対する非効率だとの指摘である。各自が今の

やり方をベストと考えている限り改善は進まない。今の仕事のやり方を最低と考えることから改善のネタが見つかる

と、改善の先生から聞いたことがある。活動で自ら仕事の棚卸し、業務分析をすることで業務効率化に挑戦するのは

どうであろうか。

以前、コンサルタントの指導で10 分刻みに日常業務をシートに記入することを1週間強制された。息の詰まる思い

がしただけで結局うまくいかなかった。しかし、自主・自発ベースでこれをやるとうまくいきそうな気がする。自分

しかできない純専門的な仕事を除き、「半専門、非専門的」仕事を効率化する。または、仕事の機能分析をして、必

要機能は効率化、過剰・重複・余剰もしくは無用な機能は思い切って合理化できそうだ。

 

整理して、以上6つをタタキ台とすることにした。

 

会 合


第一回会合

サブリーダーに早速、内容を説明して今後の進め方を相談、打ち合わせをした。サブリーダーは「“やりがい”は個々

人の価値観にもとずくものなので合意形成はどうかな」という意見であったが、とにかく今回のテーマ選定の方向性

を示す意味でも、提案することにした。

1回目の会合はタタキ台の内容を説明し、やり取りをする中で、部分的ではあるがテーマ案的な改善対象がイメージ

されたようだ。

会合の最後に、このタタキ台から“やりがい”という価値判断で各メンバーが上位3つを絞り、次回会合に持ってきて

もらうことにした。

 

第二回会合

各自がA・B・C でランク付けした内容を発表する。当然、なぜこれが自分にとっての“やりがい”なのかの理由を説明

してもらい、その結果、6つの方向性(タタキ台)から4つに絞ることができた。

次回の会合はテーマ選定マトリックスで、いよいよテーマ案を議論し、方向性を決定したい。絞り込む際の評価項目

をどうするかでは、“やりがい”重視ということで次の4項目に決定した。

「新規性」「興味性」「挑戦性」「重要性」

 

次回の会合の前に

わたしはサブリーダーと共に、支援者に今までの経緯とタタキ台からの4項目を説明し、上司サイドから見た「期待

度」の順位付けをお願いした。

最終的な段階で合意形成がはかれなかったときの参考意見として用意しておきたい。

 

第三回会合

テーマ選定マトリックスでの評価は、意外とスムーズに進んだ。2回の会合での理由説明と議論が効いたようだ。さ

て評価項目の欄は、あえて4つではなく5つとしておいた。点数付けが終わり、最後に参考意見として「上司の期待

度」を5項目目に加え、最終判断とした。


合意形成には手間と時間がかかる 

即決、すぐに多数決、これは相当チームメンバー全員が意欲的で人間関係の良い場合のみ実現可能なのではないか。

合意形成のやり方で特効薬はないがコミュニケーションがベースであることは間違いない。

今回のケースのように、上司にまで事前にこちらの意向を伝え、また上司の意見も聞いておくことも大切である。“根

回し”などと言うと、なにやらよからぬことの企てをイメージしてしまいがちだが、良きコミュニケーションの一手段

ととらえると結構応用が利き、人を巻き込む方法として有効に作用するケースが多々あるように思う。

 

「質問」作戦

さて合意形成時でやっかいなもののひとつに、「無意見」または「無意欲」メンバーへの対応がある。無理やりにで

も発言させたいのだが、あまり強圧的にやると人間関係が壊れてしまう。

ではどうするか、それには「質問」作戦が有効に思う。「意見を言え」と命令するのではなく「質問」して重い口を

開かせ、気づかせること。

まず簡単なアプローチは、二者択一で答えられる質問をする。イエス=ノウ、はい=いいえ、賛成=反対。こういう

質問の仕方を「限定的質問」と言う。

相当、口の重い人、考えていない人でもこれは答えられる。

次に相手の持っている選択肢の中から自由に発言してもらう「拡大的質問」がある。「どのように思いますか」「思

い当たることはなんでしょうか」「なぜですか」。

この拡大していく質問のやり方には「なぜ……、どうして……」と発言を掘り下げてより深く発言させる「垂直展開

型」があるが、質問が詰問になってしまうと逆効果である。注意しよう。

一方「水平展開型」は「他には……」「違う見方、切り口では……」と発言を広げてみる。

質問の仕方の工夫を身に付けることで、より多くの発言を引き出すことが期待できる。

 

「反対意見」と「異なる意見」

厄介なのは「反対意見」で、ある事柄に真っ向「反対」と言われると、その時点で話し合いはストップする。これか

らは先輩のアドバイスとわたしの体験談になるが

「反対意見」は向き合い方ひとつで、その後の局面が大きく好転する。「反対意見」を「異なる意見」と考えてみよ

う。「反対意見」を真っ向反対と受け止めてしまうと、敵対関係にまでこじれてしまいがちだが、これを「異なる意

見」と受け止めると、次はどの点が異なるのか、またどの点は合意できるのかと発言の中身の仕分けが可能となる。

当然、全く異なる点はこの時点で棚上げし、合意できる点、修正歩み寄りをすれば合意できる点と整理することで、

部分的合意形成が可能になる。

こう対応することによって「発言しない」「考えていない」「反対するけど代案がない」メンバーを少しずつ巻き込

もう。人間関係構築には、必殺技や特効薬はない。

時間がかかることを承知の上であきらめないこと、排除しないことが唯一のコツのような気がする。

 

「報・連・相」は会話形式で

さてここで困ったことがあった。わたしたちの決定した今回のテーマは事前に上司に状況報告し、期待度をランク付

けしてもらった1位の案ではなかった。

早速、テーマ決定報告をしようと思いメールで結論だけを伝えたら即、上司から電話で報告に来るよう指示があっ

た。

この結果は後にして、コミュニケーション手段としてITツールを駆使する「デジタル」と人・会話中心の「アナロ

グ」がある。大切なコミュニケーションの場面で、デジタルだけで果たして良いだろうか。昨今、職場での会話が極

めて少なくなり、その弊害が指摘されている。

例えば、隣の人にもメール。喫煙場所が唯一のダイレクトコミュニケーションの場。不必要な情報や連絡が無差別に

CCメールで飛び込んでくる。

情報のやり取りや業務の効率化ではITは大いに効力を発揮する。だが人間関係に関するコミュニケーションは「アナ

ログ」中心でやるべきだろうと日ごろ思っていたが、ついメールを使ってしまった。もしやの予感を胸に報告に行っ

たところ、決して叱責を受けたわけではない。メンバー間での合意形成のプロセスと決定したテーマの内容、今後の

取り組み方を説明し了承は得られたが……。

 

上司は会話の少なくなった現状を憂い、何とかみんなと話す機会を持ちたいとのことだった。特に小集団活動での

「報・連・相」は「今後、できるだけ会話ベースでやろう」と強調され、おまけにそのポイントを指導していただい

た。活動推進上の最も重視すべきテーマ選定についての「報・連・相」こそ、アナログつまり会話中心でやるべきだ

ったことを再確認した。

多忙な上司を見ると、つい安直にメールでとなりがちだが、これからは気をつけなければいけない。

 

小集団活動の基軸、ヤル気の源泉はテーマと目標にあります。
何をもって“やりがい”とするか?
さあ、あらためてグループで議論をはじめよう!

 

先人いわく            小集団活動
はじめよければ半ばよし      テーマよければプロセスよし
半ばよければ終わりよし   →  プロセスよければ結果よし
終わりよければすべてよし     結果よければすべてよし

 

ブレーン・ダイナミックス 経営研究所 常務理事コンサルタント
江戸 帥武